伝説の薬
我が家の健康法というのはきっとどこの家庭でも代々伝わるものがあるかと思います。
おじいちゃん、おばあちゃんは味噌だったりハチミツだったり全く根拠のないオリジナルな健康法をもっているものです。
実は我が家にもかれこれ200年くらい伝わる薬があります。
どういったモノかというと通称、打ち身の薬。そう、打撲に効く薬なのです。
幼少期におばあちゃんの家に住んでいた頃にはよくこの薬をもらいにはるばる訪れる人がいました。
こちらも売り物にしている訳でもなく、ましてや薬を扱う資格なんてのも持ち合わせていないので知る人ぞ知る飲み薬だったのです。
この薬、様々な薬草を煎じて飲むものなのですが良薬口に苦しを体現したような味。まぁ、不味い。
一族長男坊の自分ですらこれまで2回くらいしか口にしたことがない。それくらい不味いのです。
特筆すべきはその調合方法ではなく伝え方で、一族の旦那様方にはその作り方は代々教えられないのです。
どうやって伝えるかというと歴代の奥様方がなんと口伝で伝えるのみです。一子相伝で伝えられるものなのです。
私はズルしてうっすらとは知っているのですが、確か6種類くらいの草花をそれぞれ決められた分量で調合し煎じて飲みます。
その薬草の種類と分量を忘れたらそれで200年の歴史が途絶えてしまうのです。
私の嫁はそんなに賢いほうではないので忘れてしまったらどうしよう、ご先祖様に怒られてしまう、、と少し不安です。
昔はどこの家でも家系図が過去帳と呼ばれる形でずっとお寺の方に残っていました。
うちはいつだかの火事でそれが焼失してしまったらしいのです。
だから正確にいうと200年までしか残存記録がないので、本当は何百年も語り伝えられた我が家の健康法なのかな、と考えるとますます責任を感じるのでした。