宝塚にはまる女性
昔から今現在まで、宝塚大劇場から徒歩圏の場に住み、ありとあらゆる公演ポスターやその時々のトップスターの移り変わりを眺めてきた。
けれど昭和から平成に至るまで全く変わらない光景、それは宝塚ファンの女性達だ。
我が家は、買い物に行くにも最寄駅に行くにも、通称「花の道」と呼ばれる、多くの宝塚ファンの皆さんが群がる公道を通らねばならなかった。
そんな、少し特殊な生活を長年続けてきたせいか、場所が宝塚市からワープしても、風貌や会話で(あ、この人は宝塚ファンになり得る素質のある人だな)と分かるようになった。
彼女達の共通点は、人の為にとことん尽くせる不屈の精神力を感じる事。
親になってからも宝塚に嵌っている女性を見回すと、皆が重たがる役員仕事や、旗当番を人より多く引き受けてくれたり、卒園のピアノ伴奏を立候補してくれたり、とにかくマメで、人の喜ぶ顔を見るのが好きな方が多かった。
自分の好きなスターへのお弁当作りを担当するファンがいる、と中学生の時に耳にした私が、心底(いいなあー)と憧れた対象は、自分の作ったお弁当を贔屓のスターに食べてもらえるファンの女性に対してではなく、そこまで尽くしてもらえる立場のスターに対してだった。
むろん私はタカラジェンヌのようなキラキラしたビジュアルなど全くもってなければ、バレエも万年脇役止まりだったし、人前で歌も歌えない。
けれど怠惰な私にとっては、タカラジェンヌになれる事と、タカラジェンヌを応援するファンになる事は、どちらも同じくらい高い壁なのである。
娘・息子とも幼稚園の三年間お弁当のある園に通っていた。
早起きも苦手で、毎朝、眠い目をこすりながら、(ああ誰かこのお弁当作りを変わって欲しい。
頼まなくてもお弁当を差し入れしてくれるような宝塚ファンの存在が私も欲しい!)と妄想混じりに思ったものだ。
家事スキルも大して上がらないまま、主婦生活も、あと数年で20年目になる。
生きてる限り成長していたいと思いながら、今日も「花の道」を自転車で通り過ぎている。