深海魚オレンジラフィー

オレンジラフィーという魚をご存知だろうか。
もし知っていたら、なかなかの深海魚通である。
私は、別に全然詳しくはないのだが、おそらく深海魚好きの部類に入るだろう。
あの、人間の常識なんかでは測りきれない、生命の神秘、進化の威光。

地上なんかよりももっともっと広い広い海の底、圧も尋常でないその海の底で、数少ない出会い(食餌にしても繁殖にしても)を、確実にものにするために考えられた生きる戦略。
私のように、温水の中ではなく、冷たい過酷な状況を生き抜いている深海魚たち。
彼らに対しては、畏怖の念を抱いているといっても決して過言ではない。
そんな尊敬をこめて、しばしば私は海洋大図鑑をひもとく。
私の愛読している海洋図鑑は、あまり知られていない深海のことにも、通り一遍程度のことは触れてくれている。
だからメジャーな新海生物は写真で見ることができるのだ。
その中で、特に興味を引いたのが、先ほどの「オレンジラフィー」である。
見た目は、金魚と金目鯛のあいのこのような、そしてキンキのようでもあり、メバルのようでもある。
とりあえず、その名の通り鮮やかなオレンジ色をしているという以外、ごくごく普通の魚である。
そんなオレンジラフィーだが、何がすごいかというと他でもない、その寿命である。
何と長いもので150年ほど生きるというのだ。
象や亀、人間ら霊長類が何十年も生きるというのは有名だが、魚で100年以上生きるというのは、私はこの種で初めて聞いた。
小さな身体で100年以上もの長い時間を、どうやって何を考えて生きているのだろう。
その間何匹の同胞と出会って、分かれていくのだろう。
どれだけの天敵に会って、命を危険にさらすのだろう。
そうして考えていると、このオレンジラフィーが類稀な宝なように思えてくる。
残念なことに、多くの深海魚同様、体内の豊富な脂肪分を商業目的に使用するため、乱獲の憂き目を見ている。
寿命が長い生き物というのは、往々にして性的成熟が遅い。
従って、子孫を残すサイクルがゆっくりなのだ。
それなのに乱獲で数が減れば、絶滅の危機に瀕するだろう。
大切な生き物達がむざむざ乱獲されないですむように。
出来ることといったらほんとうにわずかなことしかないけれど、しっかり考えて生きていきたいと思う。

«
»